虎ノ門ニュース

【竹田恒泰氏】 「令和」の本当の意味【虎ノ門ニュース】

【竹田氏の解説】

テレビや新聞あるいは菅官房長官の令和の説明はさらっとしたものでした。そのため、本当の意味はテレビ等の解説を聞いただけではわかりません。改元まで1週間切っていますので、本当の意味を知っていただきたいということで、解説をさせていただきます。
テレビ新聞などで、よく放送されているところによると、「初春の令月」に 「気淑(きよ)く風和(やわ)らぎ」そして梅の花が咲いて欄(らん)の香りがするというところまでが引用されがちですけれども、重要なのはそこから先なんです。
ご承知のとおり、この元号は万葉集から取ってまして、梅の花の歌32首がまとまっているところがありまして、その冒頭に序文があるという構成になっています。
序文というのが大宰府で大伴旅人のところにみんなが集まったときの情景描写で、冒頭の2行で内容は、初春の令月にして気淑(きよ)く風和(やわ)らぐときて、梅の花と欄の香りの話が来ます。
「令月」というのは「いい時期だ」ということ「風和らぐ」というのは「風が和らいでいる」ということなので、「令月風和らぐ」で令月といわれても、「で?」となるのが普通です。
元号とは国家の一大理想を示すものなので、「令月風和らぐ」で「あ、そうか、日本の一大理想は令月風和らぐなのか」と納得する人はいないんですよ。序文を最後まで読めということなんです。
この部分(令月風和らぐ)は序文の冒頭なんです。この「令和」という元号はこの序文すべてを背負っている訳です。というわけでこれから序文全体を解説します。

〔序文全体の解説〕
まずいつ書かれたのかの日付もちゃんと書かれています。天平2年正月13日という日付なんですが、このとき、太宰の帥(そち)の大伴旅人の家にみんなが集まって宴をしたというわけです。
そこで、冒頭は、初春の正月のよい時期にみんなで集まって宴をしたんです。非常に気が良いそんな時期でした。すごく穏やかな風がふわっと吹いています。それから、鏡前のおしろいのように梅が咲き、欄はにおい袋のようにほわっと香っています。
向こうの方に山並みが見えるわけなんですけれども、山には雲がかかってるんです。手前には松の林があるんですけれども、松の上に向こうの雲が重なって見えるわけです。そうすると、松林が雲のベールをかぶって衣笠をさしかけたように見えるという幻想的な風景です。向こうの山の方を全体に霧がかかっていてその向こうに鳥が飛んでるんですけれども、(山に)霧がぼんやりかかっていると、(山が)薄絹をまとったようにみえますよね。その鳥はその薄絹の中を迷って飛んでいるように見えるとここもまた非常に幻想的な形式です。
そして、みんなで庭で飲み会をしているんですけれども、今年生まれたばかりの蝶が舞っている。そして空を見ると雁(かり)が飛んでいるわけです。渡り鳥ですから、昨年渡って来た雁がもう帰っていくのかなという感じです。
生まれたばかりの蝶にしても雁にしても非常に縁起がいいわけです。そして、原文にこう書いてあります。その宴の参加者たちは天を屋根にし、地を筵(むしろ)にして宴を楽しんだということです。もう建物の中にいるのはもったいない。こんなにいい時期に、梅も咲いて景色も幻想的で、鳥も飛んで、蝶も飛んで、これはちょっとみんな外でお酒を飲もうじゃないかという事です。
天を屋根にし、地を筵にして、そしてみんなで膝を突き合わせてお酒を酌み交わしあったというわけです。そしたら、あまりにもきれいな光景にみんな言葉を失って見とれてしまったという、言葉を忘れるほど楽しく和やかな宴会になりました。そこで、この感動は会話で表そうとしても語りつくせない、文字に書き起こさなくてどうして、この心の中を述べることができようか、それじゃあ、みんなで梅の花を題にして和歌を詠もう、ということで気づいたら、参加者みんなで、和歌を詠み始めてたとなるんですね。

これがこの「令和」の出典となった序文です。
この「令和」という元号はこの序文すべてを背負っている、だから、安倍総理の談話で「文化」という言葉が出ましたけど、序文すべてを読んで初めて「文化」につながるんです。初春の令月風和らぐではなぜ文化なのかわからないんですね。
つまり、令和というのは非常にエネルギーに満ちていて、そして運気が良い、そして人々が皆穏やかになって和やかに和気藹々と仲睦まじく、そして気づいたら皆で文化活動に勤しんでいる。これが「令和」という元号が持つ意味で、これが日本の、国家の、一大理想なわけです。
今、私が解説したようなことを皆が共有した上で令和の時代を過ごすのと、初春の令月風和らぐだけの理解で令和を過ごすのでは全然意味が違うんです。
平成ってわかりやすいじゃないですか、元は内平らかに外成るですから。非常に穏やかで、安定しているという意味ですからね。これは、言霊というのがありまして、私たち、1億2千万人は平成という元号を使うことによって、この平成が持っている言葉の力が、現実のものになる。いい言葉を話すといい結果になり、悪い言葉を話すと悪い結果になるというのが日本の言霊ですからね。
そして、現にこうやって平成という国家の一大理想が、現実のものになりました。
天皇陛下が式典でおっしゃいましたよね。まもなく平成という戦争のない時代を終えようとしていることにホッとしていますという、趣旨のことをおっしゃいました。
思えば、160~170年間、戦争のない元号ってなかったんですよ。昭和は第二次世界大戦、大正は第一次世界大戦、明治は日清・日露、慶応は戊辰戦争、その前は蛤御門の変から、薩英戦争から馬関戦争から大塩平八郎の乱まで戦争とか乱のない元号なんか久方ぶりでしかも、幕末なんか1・2年刻みで元号が変わりましたけど、平成は30年以上続いているわけで、それで戦争のない平和な時代を過ごしたというのは、これはもう最高なわけです。
これを受け継ぐ「令和」というのは平和の「和」を受け継ぐわけですから、平成が成し遂げた、平和な時代をそのまま受け継ぎ、そしてこの「令和」というのはさらにエネルギーに満ちた、創作意欲豊富で人々が皆で力を合わせるという、まさにこの「和」という字が持ってる和らぐという和の精神が被るわけですよね。和の精神というのはこういう所ですから、平成を受け継いで令和というのは、さらに日本がここに表現されたような良い国になっていくということなんです。
ですから、多くの人が、せっかく令和という良い元号を当ててくれたものですから、この意味を承知した上で使えば令和の言霊の力が発揮される可能性があるわけで、なので、ここは皆で共有しておきたいなというところなので、今回、令和の本当の意味を解説させていただきました。

【個人的感想】

完全に「初春の令月風和らぐ 」だけで、きれいな景色で良い元号だなあと思っていました…。
しかし、良い天気でよい景色の中、皆で酒を飲みながらわいわいやるなんて、実に楽しそう。そうこうしている内に和歌を詠もうという話になるなんて完全に同好の士の集まりの光景だなぁ。万葉集には言い方は悪いけど(物乞いなど)下流の方も和歌を詠んでいるそうだ。和歌好きが集まったんだろうか、それとも、和歌のやり方を皆に教えて、皆で詠んだんだろうか。なんとなくだけど、集まってきた和歌を歌えない人たちに和歌を教えてるお偉方の絵が思い浮かんでほほが緩んだ。
次の御世も良い御世にしていきたい。

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