外交

[藤井厳喜史]中東イランの状況・安倍総理のイラン訪問中のタンカー攻撃を受けて[マット安川のずばり勝負]

【藤井氏】2019年6月14日放送
中東で日本に物を運んでいるタンカーが2隻攻撃されました。そうすると、アメリカがすぐにイラン政府がバックでやったんだろうと言っております。
一方ではアメリカ謀略説というのが常にあって、アメリカがイランを攻撃したい(から、中東でタンカーを攻撃した)のであろうという話です。そうすると、アメリカ系の影響力のあるところが(タンカーへの攻撃を)やらせて、それ(攻撃されたタンカーの被害)を持って、「こんな酷いことをやっているぞ」だから「報復だ」と言う事でやるんじゃないかという説もあります。
もう1つ面白い情報があって、逆サイドの情報で、国営イラン通信はイラン海軍がこの事故にあって出火した石油タンカー2隻から乗員44人を救出したと言っています。「国営」の通信社なので本当かどうか分からないですが、イランは自分たちがやったんじゃ無いんだとアピールをしています。この情報は割りと早く入った情報なのでたぶん本当なんじゃないかと思いますけれども、これから本当かどうか分かってきます。
ただこれは非常に危ない事だと見ています。結論から言うと少しドンパチ来るかなと思います。長引いたり、大きな戦争にはならないかと思うんですけど…。
イランという国がありますが、ハメネイ師という宗教最高指導者に安倍総理も会って(アメリカとの)仲介役のようなことをやろうとしていたんだけれども、その最中に日本関連の船が襲われたということです。
イランのローハ二大統領のほうがちょっとソフトと言いますか柔軟派なんです。ハメネイ師の方が強硬派と言う感じです。ただ、中枢部の言うことを聞かない跳ね上がりグループみたいなのがいるんです。それはイランの革命防衛隊なんかが中心的に支持してるんだけど、レバノンでヒズボラって言うシーア派のテロ集団がいます。それから、パレッシナのガザ地区にハマスが中心に居て、それからイエメンのフーシ派、これもシーア派です。こういう所は影でイランが武器だとか資金を援助していると言うことは分かってるんですけれども、必ずしもトップの言うことを聞かないんですよ。
この人(跳ね上がりのグループ)たちからすると、アメリカとイランが仲良くなってしまう(和平してしまう)のは面白くないわけです。まあ、自分たちの立場が浮いちゃうわけですしね。
そういう事もあって、この人たちが、例えばサウジアラビアも同時に攻撃されています。フーシ派がサウジアラビア南部のアブハ空港ってとこを攻撃して26人が負傷しています。
と言う事で、フーシ派が5月中旬にもサウジの石油パイプラインも攻撃した、タンカーもやられました。
もちろん、イランは関与を否定していますけれどもサウジアラビアはこの攻撃の背後にはイランが居ると言っています。
そうすると、もちろんアメリカ側にもこの際イランを叩くべきだと言う議論が無いわけではないです。
それともう1つはイスラエルですね。イスラエルのネタニヤフ現首相は選挙で引き分け見たになって再選挙なんですけれども、この人もどちらかと言うとイランを叩くべきだと言う考え方です。選挙がまだ行われていないので現役首相ですけどね。
そうするとこれは話し合いで何とか解決したいと言うグループと話し合い路線をつぶしてしまえと言うグループと両方が両方に居るんですよ。
この場合中東でよく起きるのがタカ派同士が戦術的に手を結んで話し合い路線をつぶすと言うことです。戦略的には相反していても、戦術的には勝利ですからね。
こういうことも無いことは無いのが中東の現実ですね。

【安川氏】
イラン国民からしてみれば、インフレと物不足で国内情勢が流動化してますよね。

【藤井氏】
そうですね。困っていますよ。
それで今のイスラム教のお坊さんたちが主流の体制と言うのも、すごい特権階級が居るんですよね。
だから、そのイスラムの僧侶階級と言っていいと思いますけれど、それと、革命防衛隊です。革命防衛隊はものすごい経済特権階級なんですよ。彼らは今、ものすごい経済特権を持っているわけで、庶民はすごく困っても、おそらく北朝鮮の金ファミリーみたいなもんで、彼らは困らないんでしょうね。
だから、そこに対する恨みは溜まっています。

【安川氏】
革命防衛隊に対する恨みも溜まっているんですか

【藤井氏】
溜まっています。革命防衛隊は軍じゃないんです。国軍とは別の組織です。
(特権階級に対する恨みによって)各地に自然発生的なデモが起きています。これはアメリカが火を付けている訳ではありません。
そういう事があるので、トランプ大統領は表向きは体制転換を求めないと言っていますけれども、アメリカとしても揺さぶれば現在のイラン体制が崩れるのではないかという希望的観測はあるんですよ。
そうしますと、結論から言うと、この周辺グループ( 跳ね上がりのグループ )がとりあえず新米国家をやった(攻撃した)訳ですね。日本もターゲットにされたと言っていいでしょう。ちょうど安倍総理が行っている時に(日本にものを運んでいるタンカーへの攻撃があったから)ね。それとサウジアラビアにも攻撃しました。そうするとサウジは穏健派で親米派の反イランのアラブ系国家ですよね。
サウジとすればイラン報復はやりたくてしょうがないと思います。それを側面からイスラエルが支援するような形でイラン本国を攻めたらえらい事になるんで、イランの国外にも軍事組織(軍事基地)があります。はっきり言うとイランからイラク、シリアに通じたあたり、東地中海まで、イラン支配地域になりつつあるんですよ。それは地図に書くと三日月型になるので三日月作戦とか三日月地帯とかイランの側で呼んでいます。

 Craft MAP さまから白地図を引用、藤井氏の話に出た国家郡をプロット

イラクの住民も6割はシーア派ですよ。ですから中央政府はシーア派の人たちで、イランとツーカーなんですよね。シリアはイスラム教だけどアサド大統領は宗派は違うんですけど、お互いにロシアのバックアップを受けているんで仲間なんですよ。
そうすると、イランの影響力は中東でものすごい増えています。実際上、イラクと言う国は国内が分裂するような状態で北のほうのクルド自治共和国これはもう独立宣言していますけれども、それ以外はほとんどシーアは地域でイランの属国みたいになってしまうと思います。
イラクがほとんど無くなっちゃう様な状況は困るなと、アメリカとしても、イスラエルとしても、サウジとしても、ものすごい危機感なんですよ。
そうすると小さな紛争が起きるかもしれません。それは、イラン(の周辺的な勢力)に、新米の日本とサウジがやられた、そうすると、次に中東に展開するアメリカ軍や基地がやられたときって言うのはアメリカは報復せざる終えなくなってくると思うし、新米で反イランのアラブの国がイランの海外基地に(何らかの攻撃をしてもおかしくないです)、特にシリアに大きな基地を持っていて拡充しています。そこらへんを叩くと言うことは十分に考えられます。

【西川氏】
三日月計画が出現してしまえば、逆にロシアにとってはかなりのプラスですか

【藤井氏】
ロシアにとってはもちろんプラスです。
ロシアにとって非常にプラスで、地中海におけるロシア軍のプレゼンスもますます大きくなるので、NATOとしても非常に困るということになってきますよね。
そうなると、アメリカも放っておく訳にはいかないねと言う事で、アメリカは直接は動かないでしょうが、私が聞いた話では、アメリカは中東某国に特殊部隊を1000人以上送り込んでいるというんです。これは何かと言うと、いわゆる戦闘する特殊部隊じゃなくて、ドローンの特殊部隊だといわれています。ドローンを操る特殊部隊となると、サウジがイラン攻撃をするときに側面援助するという事が想像できますよね。これは兵隊さんが直接危険なところに行かなくてもできます。
というようなシナリオがあるようなんで、イランがこれ以上出てきたらアメリカが主力というよりはサウジが前面に立ってやるんじゃないかなと思います。

[個人的感想]
このあたりで紛争になると、石油価格にかなりの影響が出ると思うと人事ではありません。
そして、個人的に気になるのは、もし、中東で紛争が発生し、ある程度の規模になってロシアが出てきた場合、ウクライナとイラク・イラン・シリアの三日月ラインの2方面でロシアは軍を展開しなければならなくなります。
そうなると、日本にとっては原油価格の高騰と言う影響と、ロシアの極東地域への力の行使が緩まる事態の発生が見込まれると思います。
そして、基本的に原油が1バレル60ドルを超えるとシェールオイルの増産によりある程度まで、下がるとの事なので、アメリカと協力できればロシアの経済に打撃を与え、軍事力をヨーロッパ・中東方面に固定することで、北方領土が帰ってくるかも知れません。
原油価格が上がればロシア経済に有利で、中国経済に不利です。逆に、原油価格が下がればロシア経済に不利で中国経済に有利です。
ここで、安倍政権の外交力でどう動かすのか注目しています。

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