経済

米中の新たな貿易管理規制及び関連する諸動向

CISTEC 事務局が「米中の新たな貿易管理規制及び関連する諸動向」のレポートを公開していたので紹介します。
レポートによれば、国防権限法 2019に盛り込まれた
「輸出管理改革法」(ECRA)、
外国投資リスク審査現 代化法(FIRRMA)、
包括的武器禁輸国向けの輸出許可要件の見直しなどの新たな規制が導入されつつある。
との事で、それぞれについての概要・影響について解説されています。

詳細はリンクを張っておきますのでそちらをご確認ください。
リンク: 「米中の新輸出規制等の動向」

以下
CISTEC 事務局 のレポート「 米中の新たな貿易管理規制及び関連する諸動向 」から抜粋、引用、要点のまとめをします。個人的な注釈の箇所には” ”をつけます。正確な内容は上記のリンクからご確認ください。

1 米国の「国防権限法 2019」とその規制内容

(1)輸出管理改革法(ECRA)の制定
商務省 BIS による輸出管理規則(EAR)の上位法はこれまで失効していたが、本輸出管理改革法の制定によって、その上位法として位置づけられることとなった。ポイントは、
・エマージングテクノロジー(「新興技術」)と
 ファウンデーショナルテク ノロジー(「基盤的技術」)についての新たな輸出規制の導入
・米国の包括的武器禁輸国に対する輸出許可要件の見直し指示
”→ 輸出管理改革法(ECRA) は基本的にアメリカに敵対している、もしくはアメリカの覇権を脅かす国を想定してると思われるので日本が国家として丸ごと直接対象になるとは思えないが、みなし輸出や再輸出の規制に引っかかると、個人や企業がアメリカでの商売ができなくなる可能性がある。また、特に中国との経済戦争を強化する動きが強まっていて、下手をするとドル取引が規制される事態に発展する可能もあるかも知れない。”

(2)外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)の制定
CFIUS(外国投資委員会)による対米投資審査対象を拡大するもので、
・小規模投資(スタートアップ企業等)を含む。
・対象は、
 重要なインフラ、
 「重大技術」(クリティカル・テクノロジー。 「新興技術」「基盤的技術」も含まれる)、
 米国人の機微な個人データに 関わるビジネス関与者への投資、
 米軍や政府施設近隣の土地取得等
”→これは合法的なスパイ活動を規制する為の動きのようで、簡潔にいってアメリカの優位性を現在担保してる物や人物や情報、将来的にアメリカの優位性を向上させそうな物や人物や情報はアメリカに敵対する国に渡すつもりはないということだと思われます。”

(3)米国政府調達における中国企業の通信・監視関連機器・サービスの利用禁止と、それら機器等の利用企業との取引禁止規定

2. 輸出管理改革法(ECRA)について

”このブログでも紹介しているのでそちらもご覧ください
【藤井厳喜氏・井上和彦氏】日米貿易交渉【虎ノ門ニュース】

(1) 米国の輸出規制の基本的枠組み
米国の輸出規制は、日本や欧州のそれとは異なる部分があるので、注意 が必要である。例えば次のような点である。
・米国からの輸出後であっても域外適用となる規制(再輸出規制)
・同一国内で永住権を保有しない外国籍者への移転(組織内の移転も含 む)も規制
(みなし輸出・再輸出規制)
具体的には次のような規制の枠組みとなっている。
① 輸出規制(於・米国)
米国から、米国に存する技術(米国原産とは限らない)を外国に輸出する場合

② 再輸出規制(於・日本)
米国原産の技術(又はそれが一定割合組み込まれた技術等)を、米国の輸出先国(例えば日本)から更に第三国に輸出する場合

③ みなし輸出規制(於・米国)
米国内において外国籍者(米国永住権者は除く)に技術を開示する場合 (同一社内であっても規制対象)

④ みなし再輸出規制(於・日本)
米国からの輸出先国(例えば日本)において、日本国籍以外の外国籍者 (日本永住権者は除く)に EAR対象技術を開示する場合
”EARは アメリカの輸出管理規則 ”

(2)ポイント① ―「新興技術」と「基盤的技術」についての規制
①「新興技術」と「基盤的技術」の具体的対象
ECRA の具体的規制対象の「新興技術」と「基盤的技術」の具体的対象はまだ決まっていない。
「新興技術」についての定義はないが、まだ研究段階で製品化に至る前の形成途上のものという概念と捉えられている。
【例示された 14 分野】 ※ これらの下に更に細部の技術例が掲げられている。
(1) バイオテクノロジー (2) AI・機械学習 (3) 測位技術 (4) マイクロプロセッサー (5) 先進コンピューティング (6) データ分析 (7) 量⼦情報・量⼦センシング技術 (8) 輸送関連技術 (9) 付加製造技術(3D プリンタ等 ) (10) ロボティクス (11) ブレインコンピュータインターフェース (12) 極超⾳速 (13) 先端材料 (14) 先進セキュリティ技術
”→もはや完全に国産の技術でもない限りほとんどの新しい技術は引っかかると思ったほうがよさそう。”

「基盤的技術」については、既に存在する(成熟している)技術について 米国の安全保障上の優位性確保の観点から規制するという考え方に立っている。このため、既に輸出等を行っているハイテク技術で、米国が優位性を確保する必要があるものと位置づけるものが規制されることになるので、産 業界としても対象技術がどうなるのか注視されるところである。
そのパブコメについても、近いうちに募集される模様である。
”→アメリカにとって安全保障上の不利になる技術の流出は許さないと言外に言っているようなものなので、アメリカで商売をする場合は中国とかアメリカの敵になるような国・企業・個人とビジネスをするとどんな規制の対象になるかも知れない”

② 規制対象仕向国
・「最低限として禁輸国(武器禁輸国を含む)」とされている。主としてそれ らの禁輸国を想定していると思われ、それ以上に日本等も含まれるとは考えにくいが、規定上はその可能性がないわけではない。
・米国の「禁輸国」の概念は必ずしも明確ではないが、以下の 5 カ国・地域 と考えられている。
イラン/北朝鮮/シリア/キューバ/ウクライナのクリミア
・「武器禁輸国」は、2019 年 1 月初めの時点で、下記の 21 ヶ国である。(ロ シアは武器禁輸国ではないが、中国は武器禁輸国に含まれる)。
Afghanistan/Belarus/Burma/Central African Republic/China (PRC) Congo,/Democratic Republic of Cuba/Cyprus/Eritrea/Haiti/Iran//Iraq Korea, North/Lebanon/Libya/Somalia/South Sudan,Republic of Sudan/ Sudan /Syria/Venezuela/Zimbabwe
”アフガニスタン/ベラルーシ/ビルマ/中央アフリカ共和国/中国 /
コンゴ/キューバ民主共和国/キプロス/エリトリア/ハイチ/イラン/イラク /
朝鮮民主主義人民共和国/レバノン/リビア/ソマリア/南スーダン、スーダン/
スーダン/シリア/ベネズエラ/ジンバブエ”

③ 規制対象「技術」
・米国 EAR では、上述の通り、「貨物」「技術」「ソフトウェア」の3区分で 規制されているが、今回の規制が、「技術」だけなのか、「貨物」「ソフトウ ェア」も含まれるのかは、法令上、パブコメ上は明確ではない。
・しかし、「技術」の定義として「貨物」「ソフトウェア」を含む規定例もあ る。また、米商務省筋は、「「新興技術」等でいう“technology”は、現行 ECCN 上の“technology”規制とは規制範囲が異なる」としており、「技術」だけ でなく、「貨物」「ソフトウェア」も対象になる可能性を示唆しているので、 留意が必要である。

(3)ポイント② ―「包括的武器禁輸国」に対する輸出許可要件の見直し
ECRA では、上記の「新興技術」「基盤的技術」の規制とは別途、「包括的 武器禁輸国」に対する輸出、再輸出、国内移転について、以下を含む許可要 件の見直しを求めている。
① 軍事エンドユース・ユーザー規制の許可要件の範囲の検討
② リスト規制で許可不要とされているものの許可要件の是非の検討
まず、軍事エンドユース規制については、リスト規制品目でなくても、 通常兵器関連の最終用途に懸念がある場合に個別の輸出案件ごとに許可が 必要となるものである(日本でいう通常兵器キャッチオール規制)。32 品 目が対象だが、最近の AI 兵器、宇宙兵器その他の先端兵器開発の現状を 踏まえて、拡大する可能性が考えられる。 また、中国、ロシア等 4 カ国 が対象だが、中国のみ、軍事エンドユーザー規制(最終需要者に懸念がある場合に許可が必要)が規定されていない。これが規定される可能性があ る。
リスト規制については、従来、許可不要で輸出することができたものが、その範囲が狭められたり、製品によっては許可が難しくなる可能性がある。
この許可要件の見直しについては、昨年 8 月 13 日から 270 日以内に見直した内容を施行することが求められているので、今年の 5 月中旬までに は施行される可能性がある。
”→エンドユーザーに懸念のある場合許可が必要とされるって、中国人で「18歳から60歳の男性と18歳から55歳の女性」は有事の際に「個人や組織が持つ物資や生産設備は必要に応じて徴用される」とされているから懸念のあるユーザーになるのか?
もしそうだとすると、ほとんどの中国人は規制対象?”

(4)我が国産業界にとっての留意点
今回の米国の新たな輸出規制に関連して、産業界として、特に経済関係 が密接な中国との関係で留意が必要な点としては、次のようなものが挙げ られる。
① 「新興技術」「基盤的技術」の規制については、国際輸出管理レジー ムに提案し国際的に連携することが ECRA 上求められている。したが って、日本からの輸出についても同様の対応を求められる可能性があ ること。
② これまで許可対象でなかった技術・製品が許可対象となり、米国から中国への輸出・再輸出、みなし輸出・再輸出、中国内での移転、中国企業内でのやりとりに制約がかかる可能性があること。
③ 中国では軍民融合政策が国家戦略として推進されており、民生企業・ 大学もこれに関わることが求められる場合が増えてきつつある中、軍事エンドユース、エンドユーザー規制の強化等により、民生取引にも制約がかかる可能性があること。

3.輸出管理改革法以外で取引に影響がある米国規制

「輸出管理」に直接関わる米国規制は上記の輸出管理改革法(ECRA)だけ だが、貿易や国際サプライチェーンに影響を及ぼす恐れがある規制は、制裁関 税だけではない。前掲の国防権限法 2019 で規定された外国投資リスク審査現 代化法(FIRRMA)や中国製通信・監視機器関連の規制、そして最近の米国に よる裁量的輸出規制(Entity List 等への掲載)や制裁措置等があるので、簡単 に紹介する。

(1)外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)による制約
従来のような、米国における米国企業への支配権を及ぼして安全保障上懸念が生じるような投資だけでなく、重要インフラ、「重大技術」 (Critical Technology=ECRA の「新興技術」「基盤的技術」を含む)、機微な個人データ等に関わる「米国ビジネス関与者」への投資によって懸念が生じる場合も規制対象となった(支配権が及ぶかどうかは関係ない)。
既に「重大技術」について、先行実施暫定規制(パイロットプログラム) が公表され、2018 年 11 月 10 日から時限的に施行された。
これにより FIRRMA で規制される投資行為の内、特定 27 産業分野の 「重大技術」に関与する米国ビジネスへの買収・合併及び支配権を及ぼさない小規模投資行為の一定のものが、先行して規制されることになった (事前届出義務化、CFIUS による審査)。
”大和総研 ニューヨークリサーチセンター 主任研究員 鳥毛 拓馬 氏「 米国対内投資規制の一部が施行開始 」によると FIRRMA の 特定 27 産業分野の 「重大技術」 は
航空機製造
航空機エンジンおよびエンジン部品製造
アルミナ精錬および一次アルミニウム製造
ボールベアリング・ローラーベアリング製造
コンピューター記憶装置製造
エレクトロニックコンピューター製造
誘導ミサイルおよび宇宙船製造
誘導ミサイルおよび宇宙船推進装置、推進装置部品製造
軍事用武装車両、戦車および戦車部品製造
原子力発電
光学機器および光学レンズ製造
その他基礎無機化学品製造
その他誘導ミサイル・宇宙船部品および補助装置製造
石油化学製品製造
粉末冶金部品製造
電力、配電および特殊変圧器製造
一次電池製造
ラジオ・テレビ放送および無線通信機器製造
ナノテクノロジーの研究開発
バイオテクノロジーの研究開発(ナノバイオテクノロジーを除く)
アルミニウム二次精錬および合金製造
探査、探知、航行、誘導、航空・航海用システムおよび計器製造
半導体および関連機器製造
半導体装置製造
蓄電池製造
電話装置製造
タービン及びタービン発電機製造
だそうです。
つまり、工業・コンピューター系の企業はほとんど引っかかるのかな?
アメリカ企業をM&Aするときはよく調べておかないと大事になりそう”

なお、未施行ながら、既に日本企業の欧州子会社に対する中国企業の投資が CFIUS により承認されなかったという事例が生じている。米国における米国企業への投資ではないが、その欧州子会社の米国でのビジネス展開状況を踏まえての措置と思われる。このような事例が、今後は広く生じ る可能性がある。
”→欧州もこの規制に乗っかる可能性は高いみたいです。
やはり、NATOに入っている国は安全保障面では一致して動きたがってるのか?”

(2) 米国政府調達での中国企業製通信・監視機器等に係る規制による制約
国防権限法 2019 では、
① 通信・監視関連の同法に特記された中国企業 5 社などの中国企業(子 会社、関連会社を含む)製の通信・監視機器やサービスを「本質的・実 質的に」利用している製品等の米国政府機関による調達禁止(2019 年 8 月 13 日施行)
② 上記①の機器・サービスを「本質的・実質的に」を利用している企業 等との米国政府機関の取引禁止(2020 年 8 月 13 日施行)
という 2 類型の規制が規定されている。「本質的・実質的に」の解釈その 7 他詳細な下位規則は別途公表される予定であるが、特に後者の②の規制 は、海外企業も含めて影響が大きい。なお、「中国企業」の範囲には、特 記されている 5 社以外にも、中国の「所有/支配/関係」下にある企業も 含まれる。その定義は示されていないが、国防総省等の関係機関が協議して企業名を告示することとされている。
中国企業製のサーバー、ルーター、基地局等を利用している企業等は日本、アジア、中国を含めて多数あると思われるが、利用している場合は、その企業の業種、製品が何かに関わらず、米国政府機関との取引が禁止されることになる。そのまま実施されるとすれば、サプライチェーンのあり 方にも影響を及ぼす強い懸念がある。
※ なお、同規制については、ファーウェイが、2019 年 3 月 7 日に、米国 憲法に違反するとして米国連邦地裁に提訴している。
”→太字部分の規制はかなり広域でえげつない。 2020 年 8 月 13 日 施行とはいえ、アメリカ政府と取引のある企業は社内のルーターやサーバーを調べるだけでどれほどの労力が必要になるのか…。そもそも、それらをきっちり調べ上げることって可能なのか?
完全日本国産サーバーやPC、スマホ・携帯を販売すれば一定数は必ず売れそう”

(3) 米国の裁量的輸出規制や制裁による制約
米中間の緊張を背景に、特に昨年後半以降、米国による中国企業に対す る規制措置が目立っている。米国輸出管理規則(EAR)では、商務省は、 「米国の安全保障政策又は外交政策上の利益に反する者」や違法輸出に関 与した者等を、“Entity List”や“Denied Persons List ”(DPL)等の、輸出が 原則禁止される者のリストに掲載することができるとされている。

4. 中国輸出管理法草案等について

中国輸出管理法草案の問題点
① 幅広い分野の多くの企業に影響―拙速による混乱懸念
新たに通常兵器関連の汎用品・技術の輸出規制を導入することになるの で、極めて広汎な製品・技術が中国からの輸出規制の対象となる。今ま で規制がなかったところに、十分な準備期間がないままに施行されるこ とになれば、大きな混乱を招く。下記③のような異質な制度が入ってこ れば混乱は更に大きい。
② WTO 上の問題
国際競争力、国際市場への影響等を考慮要素にしていることや、「戦略 的稀少資源の保護」を起草説明に記載して規制対象化する含みが見られ ることは問題。また、報復措置(対等原則)の規定もなじまない。
③ 貿易・投資環境を著しく阻害する異質な制度
米国法を参考にしたと思われるが、草案にある下記の制度は国際的には 一般的ではなく、中国との輸出入や外資企業の日常的活動に多大な制約 になる。ひいては、中国での立地自体に大きなマイナス要因となる。 ・再輸出規制の導入(規制対象の中国製品内蔵品の域外からの輸出の許 可) ・みなし輸出規制の導入(国内の組織内外の外国人+(外資企業)への 提供規制) ・輸出先での最終需要者・用途確認権限の規定
④ 不合理な運用の懸念
不合理な技術開示要求/ブラックリスト(禁止顧客リスト)等の政治 的利用等の懸念

個人的感想

虎ノ門ニュースで藤井厳喜氏が言及されていたが、米中貿易戦争の流れはトランプ政権だけのものではなく、共和党・民主党両党の合意であり、議会がトランプ政権にもっとしっかりと対中強硬路線でやれと言う風に促しているという旨をおっしゃっていましたが、そうだとすれば、この流れはトランプ政権が何かあって交代しても続きそうです。
中国の崩壊のプロセスはおおむね決まっていて、
 ①中華統一
  ↓
 ②経済拡大
  ↓
 ③官僚腐敗
  ↓
 ④異民族(蛮族)討伐&新興宗教が流行る&内乱多発
  ↓
 討伐成功→②に戻る
 討伐失敗→異民族による逆襲で王朝崩壊、そして新王朝として①に戻る
のパターンです。
今のところ④のところまで来ています。
ここで異民族の討伐に成功すると次の②に戻ります。
つまり、歴史的なパターンで言うと中国は興亡タイミングに来ています。
言い換えるなら中国の興亡この一戦(日米豪印vs中朝)にあり状態に見えます。
とりあえず、中国とビジネスをするのは止した方がよさそうです。

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