虎ノ門ニュース

【藤井厳喜氏・井上和彦氏】日米貿易交渉【虎ノ門ニュース】

(関連記事)2019年4月24日

【居島氏の導入】


日経新聞の記事の概要です。日米両政府は日本時間16日午前、閣僚級による貿易交渉の初会合をワシントンで行いました。茂木敏充経済財政・再生相は2019年4月15日の協議後「昨年9月の共同声明に沿って交渉を進めると再確認した」と述べ、まず物品貿易を軸に交渉を進める考えを示しました。
また、為替条項については「2017年2月の日米合意で、財務相間で議論するということで合意している」と述べ、TAG交渉での議論に否定的な考えを示したということです。共同声明では自動車や農業などの物品貿易と、早期に結論が得られる一部のサービス分野を最初の交渉範囲としていました。茂木大臣は「米通商代表部のライトハイザー代表と交渉交渉の進め方では一致できている」と語り、サービス分野については「具体的にそういった分野は出てきていない。今日の内容の中心は物品だ」と述べました。となっております。
ロイター通信の概要によりますと、アメリカのトランプ大統領は2019年4月 15日、「米中通商協議がいかなる結果に終わろうが、アメリカが勝者となる」との考えを示しました。これはミネソタ州バウンズビルで行われたビジネスラウンドテーブルでの発言です。
米中通商協議についてはムニューシン財務長官はこの日(15日)、フォックスビジネスネットワークに対し「協議は大きく進展してる」との認識を表明、ただ「施行体制など交渉が必要な事項は残っている」とも述べた。ということです

【藤井厳喜氏の解説】

まずはECRA(エクラ)について解説しようと思います。これはこれから非常に大に名言葉になってきますので、ぜひ覚えておいて頂きたいともいます。Export Control Reform Act というもので、単純に言いますとアメリカがハイテク製品あるいはハイテク技術を対チャイナに輸出するのを禁止する法律です。そして、5月の中旬から実際に成功されます。アメリカがやるのは当然なんだけど、日本として気をつけなければいけないのは、日本企業も全てカバーされてくるということなんですよ。ヨーロッパや日本も一緒にやってくださいよとやらないどうなるかというと、アメリカは制裁しますよということをいってきます。ですから、かつてソ連圏にハイテク技術を輸出してはいけないというココム( Coordinating Committee for Multilateral Export Control )規制があったでしょ。私は予てから、新ココムができますよといってきたんですけど、エクラっていうのが新ココムです。今、日本では、ジェトロ (日本貿易振興機構)などが詳しく調べて、日本企業が引っかからないように注意してくださいとやっているんですが、日本にとっては非常に頭の痛い問題も出てくるというふうに思います。
というのは、たとえばアメリカのハイテク技術を使った製品なり技術をチャイナと日本の企業が共同研究したり、共同開発しているっていう部分が、最近増えているんですよ。その中に、大元がアメリカの技術(でそれを発展研究したもの)などがあると、全て引っかかってきます。それから、日本の企業でも、持ち株をチャイナに持たれてるとか、あるいはその関係で重役レベルにチャイニーズが入っているとかになると、アメリカが その企業を非常に厳重に 監視するといいますか、制裁対象にしていく可能性があります。それから、たとえば、ある企業の中央研究所の技術の研究者にチャイニーズが入っていると、これはそこからチャイナに情報が流れているんではないかということになりますので、非常に裾野の広がりが大きくなります。そこを私は非常に心配しています。
ところが、最近の日本経団連の動きは大丈夫なんだろうかと疑問を感じるようなことがありまして、たとえば、日本経済新聞の4月15日の電子版によると、トヨタ自動車や日立製作所など日本の主要企業は中国のスタートアップ企業と相次いで提携するという動きを見せているということです。これはハイテク分野ですよ。この記事によると、スタートアップ企業が協力する会社として、トヨタ、日立、京セラ、ダイキン、みずほ銀行、伊藤忠商事という名前を挙げてるんです。伊藤忠はものすごい親中派なのでしょうがないのかも知れませんが、これは私に言わせると、アメリカに「さあ、バッシングしてください」と言わんばかりの隙を見せてしまうことになるという意味で非常に危険な動きだと思います。
この動きの中で14の技術分野を挙げているんですが、バイオからAIからコンピューターIT関係、ロボット工学など、ほとんど先端技術・ハイテクといわれているものをカバーするんですよ。
アメリカの本音というのはメイドインチャイナ2025をアメリカから盗んだ技術ではやらせないぞという構えなんですね。
こう言う時に、例えば、EV(電気自動車)というと モーターとか電気技術とかの相当ハイレベルな技術の集積です。これらの技術は即軍事にも応用可能なものがたくさんあります。そういった分野で提携提携とやっていきますと、今日本の自動車企業にとって一番儲かっているはずのアメリカ市場から叩き出されるとか、日本の自動車企業に対して10%の関税を掛けるとか、あるいは25%の関税掛けるよとか言う事を、トラップ政権はやってくることが十分に考えられます。これは本当に気をつけないといけないことです。日本経団連に入るレベルの大企業が少しボケているのではないかなと思えます。今、米中は経済で戦争してるんですよ。言い換えると、米中新冷戦ですよ。冷戦から熱戦になる可能性もあるくらいなんだけれども、そんなときにチャイナのハイテク分野に投資するとか、一緒に研究するとか、開発するとか、するのはタイミングが悪すぎます。
なので、大きな流れを見てくだいさいと言いたいですね。去年(2018年)の10月4日にアメリカのペンス副大統領が チャイナに対する宣戦布告に等しいような 大演説 (戦火を交えるようなことはないけど経済や文化、政治、外交における戦争であると、チベットやウイグルの問題や民主化運動をやっている人たちのことも取り上げて、チャイナが今の世界のルールを守ってくれるようになるまではアメリカが圧力を掛け続けるという内容)をやって対中の姿勢を鮮明にしています。
もちろん、政治的、道徳的に今の中国共産党に協力するということはやるべきではないと思います。しかし、ビジネスだからやるという発想はあると思います。しかし、これをやると儲かりません。なぜなら、アメリカという最も儲かっている市場から排除される理由を与えてしまうことになります。そういった大きな流れを見た上でトップは判断してほしいと思います。日本の大企業の行く手が非常に心配だなと思っています。

【井上和彦氏の解説】

結論から言えば、経済と安全保障は表裏一体です。これに尽きると思います。
日本は経済優先であるとか、あるいはその経済と政治は別だとか、あるいは国と国との関係はまた別だとか言うようなことを日本は言ってきました。なぜそれが成功したように見えたのかというと、たまたま強力な日本の外交、あるいはアメリカの外交があって、その陰に隠れて何もなかっただけの話です。現実には戦争がなぜ起きるのかというと、経済資源や経済権益の拡大とかあるいは資源をみんなで取り合うとか、そういったことで戦争が起こるわけです。
自分たちが経済だけやってれば戦争なんか起きないよと武器なんかいらないよとかそういう事を言う経済人がいらっしゃるようですが、それは大きな間違いであるということです。
ココム規制に引っかかった例で言うと、かつて東芝がソ連(今のロシア)に潜水艦のスクリューを薄くする特殊な工作機器を輸出したことが大きな問題になりました。もちろん、それを問題にする側のアメリカも当然ながら、日本に対して政治的な力を持っています。
いずれにしても、経済は政治や外交や安全保障とは別だという考え方を日本の経済界が持っているようでは大変なしっぺ返しがあると思います。アメリカがエクラを厳格に運用しようとしたときに日本企業は中国企業とずぶずぶだったとなると、許されないだろうって話が出てくるわけで、日本が( 日本の企業の取締りをきちんと行わないなど)言うことを聞いてくれないのであれば、日本に対しても制裁しましょうかという話になったときに(日本の企業は)どう対処するのかということになります。
この問題の根本は、日本人の国家観が希薄になっていることが大きな要因ではないかと思います。
なので国家観を持って対処していかないといけないと思います。

【藤井厳喜氏の解説】

安全保障と経済はまさに表裏一体で、レベルが高くなればなるほど、国が大きくなればなるほどそうなんですよ。
もう1つだけ言っておきたいのは、チャイナには純粋な民間企業は1つもない点です。全て、共産党がバックでコントロールしています。特にハイテク企業(=軍事にすぐに応用できる技術を持つ企業)には、全て、中国共産党と軍部がいます。だから発展もしてきたわけです。だから、純粋な民間企業と付き合えばいいのではないかということは、ことチャイナに限ってはありえません。そのことを肝に銘じておいてください。日本の大事な企業がこのようなことで傷つけられたら、日本国にとっても大きな損失になります。日米同盟も揺らぐようなことになってはいけないので財界のトップレベルのリーダーたちは、今こそ目を開いて、世界は米中の対決時代なんだということをしっかり認識して頂きたいと思います。

【個人的感想】

ECRA(エクラ) についてよくわかりました。とりあえず、会社に警告をさせるように ジェトロ を調べてみようと思う。
しかし、本気になったアメリカは怖いし、転寝している日本企業も別の意味で怖い。

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